人は当たり前のことが当たり前でなくなったとき、
日常何気なく行っているその当たり前ができなくなったとき
そのありがたみを改めて感じるものだ。
例えば、あなたが物を噛むという行為が困難になったとしたら?
その不自由さを体験してはじめて
・噛めることの喜び
・味わえることの幸せ
を痛感するのではないだろうか?
桃子は今回、身を削るような思いをした。
正しくは歯を削って……だが。
しかも歯医者を敬遠していたわけでなく半年に一度は定期的にクリーニングも行っていたのに、まるで拷問のような歯の治療を行わねばならなかったのだ。
「あれ?」……最初はなんとな~く左の奥歯が疼く感じだった。
すぐ歯科医院に予約をとって診てもらったところ
「知覚過敏でしょう」ということで薬を塗布された。
しかし、2,3日経ってもその疼きや歯が浮いた感はおさまらず、
冷たいものもやたらシミる。やっぱりおかしい……ってんでまた歯科医を訪ねる。
先生はレントゲンの画像を眺めるも首をひねる。
「う~~ん。虫歯もないし……とりあえず暫く様子を見てください」
え~~暫くっていつまで見ればいいの?……って感じだ。
しかし、その直後、歯が疼く感じからズキズキ感へと変わったのだ。
奥歯に心臓がいる感覚、脈を打つのが感じられる。(拍動痛)
素人からしてもこれはもう悪化している以外考えられない。
こわごわ再々度歯医者を尋ねる。
「もしかしたら歯の根っこがやられているのかも?これはレントゲンでは映らない部分だから、歯を削って内部を診てみなきゃわからないねぇ……」とのこと。
奥歯の薄いインレーを外して歯に穴を開ける、
まさに蓋を開けなきゃわからないってヤツである。
仕方ない。この痛みの原因を解明しなくてはこの痛みはおさまらない!
とにかく辛い痛みを早く取り去りたい一心で
桃子は“まな板の鯉”になる覚悟を決めたのだ。
「やだけど、やってください」
麻酔を打つも虚しく、親知らずの時の痛みなどメではない!
初めて味わう種類のとんでもない痛み。
しかもじっとなどしていられないのにじっとしているしかない、のである。
”悶絶の苦しみ”にも関わらずころげまわることものたうち回ることも許されない。
そして気絶することも出来ないという……壮絶な闘いなのである。
「あぁ、もう神経がやられちゃってるね~。抜くしかない。歯根膜炎だね」
先生は冷静に言い放った。
『ええ~~っ!虫歯じゃないのに神経ってやられてしまうの?』とすぐさま聞きたかったしその歯根膜炎とやらのことも突っ込みたかったのが、
口を開けたまま器具を入れられている桃子には
「あ~あ~~」とか「ひ、ひこんまく?(歯根膜)」としか言い様がない。
悶絶の苦しみに耐えぬき治療後はグッタリし放心状態。
まるでボロ雑巾。泥酔した朝帰りのようにヨロヨロしながら帰宅した。
先生の話によれば虫歯により神経が破壊されるのが通常だが、ストレスや外的な刺激によっても歯の神経はダメージをうけるらしい。
う~~ん、確かに、よく考えると歯は常時負荷がかかっている気もする。すごい力が掛かるのは何も固い物を噛むときには限らない。
運動する時、筋トレする時、パソコンを打っている時、そして睡眠中にも知らず知らずに歯を食いしばっているかもしれないなぁ……。
ストレスや疲れ、不規則な生活により人は歯ぎしりや食いしばりをしてしまうらしい。
その睡眠時の歯軋り、噛む力は特にハンパではないようだ。
つまり身体は休んでいても歯の神経は興奮状態、神経が休まらないとはこのことか?
そして、歯軋りの圧力に歯が耐えられなくなってダメージをうけ続けた神経は壊死し、そのうち腐敗する仕組み。
それを放置しておけば炎症が起こり歯髄炎、顎骨骨髄炎へと悪化したりする。
今回はそのご臨終となってしまった神経を取る、つまり抜髄の治療を行ったわけだか、それで「終了~」ではない!
抜髄しちゃえばおしまい、ちゃんちゃん、めでたしめでたし……ではないのである!
歯の治療はまだまだ続いたのだ。
歯の神経は枝分かれしていて、どんな形でどんなふうに枝分かれしているかは人それぞれ。
彎曲、屈曲している根管や細い根管など複雑で繊細。だから一度できれいにとれるってわけではないらしい。
少しでもその根っこの取り残しがあるともう大変!
死んだ歯髄をエサに細菌がどんどん繁殖し、根管内が細菌の棲み家になったり根の先で骨を溶かしたり膿がたまったりもする。
だからこそ枝分かれしている根っこや細菌を残らずすべて取り除かなくてはならないのだ。
しかも根管内は肉眼ではなかなか見えないため手探りに近い、面倒で厄介な治療である。
この根管治療は毎度毎度かぶせたものを取り除いては歯の内部を洗浄する。
その繰り返し行われる拷問はシャープペンシルの芯よりもずっと細い針のような器具(リーマーとかファイルと呼ばれる)を使って行われる。
その針でゴシゴシ、カリカリと歯の内部を何度も何度もしごかれるという内容。
ひとつの歯の神経が死んでも私は生きているわけで、チクチクの恐怖と苦しみを十分感じとることができる。
また歯の突貫工事というのは顎にも頭に響く。
歯の内部に針が侵入してゴシゴシされるたび頭にキーンと突き抜けるような痛み。気がおかしくなりそうだ。
治療後は毎回生気を吸い取られズタボロとなり、その日は全く使い物にならない。
しかも非常にキツかったのはこの治療を度重ねても
痛みが消えないことだった。
そして痛みが続けば患者はどんどんネガティブになる。
噛めない、ちゃんと物を味わえない、先行きわからない不安に苛まされるのだ。
……なんと十数回に渡る突貫工事を行い、結局2ヶ月後、他の先生に診てもらうこととなったのである。
桃子は今回この治療体験によりセカンドオピニオンや先生の見解を仰ぐことの必要性をヒシヒシと感じた。
また、日本の根幹治療がぶっちゃけ保険点数が低すぎて歯科医の利益にならないこと
つまり保険制度による困難さもあるということ。
そしてさらにぶっちゃけるなら
利益にならないからこそ、この根管治療が歯科医の腕に差がでること、
そしてこの治療に対しての姿勢や取り組み方に差がでるということも知ることとなった。
(※患者からしたら許せないことであっても、先生により技量の差があることはいいとか悪いとかでなく仕方のないことともいえる)
そして根管治療の件だけでない。歯医者とのトラブルはよくあること。
例えば歯医者へいっても痛みが消えなかったり
なんども通院してもなかなか治らなかったり
患者が理解できるような説明や治療方針をしてもらえなかったり
で、
不信感や不安感を抱いている人は存在する。
桃子の知り合い達もこんなことを言っていた
「30分でいっちょあがりするって
回転の速い牛丼屋かラーメン屋を目指しているのか?って感じだね。
確かに予約時間に診てもらえないのは、
患者にとってストレスになるけれど……
時間にとらわれ誤診してしまったら意味ないよね」
「歯医者って街にあふれているからこそ当たりはずれが大きいと思うなぁ。
歯医者選びって大事だよね」
「私も虫歯でかぶせてもらった詰め物が取れちゃったから、もう一度かぶせてもらったのだけど2日後にまた取れちゃって。
さすがに歯医者を変えたよ。しかもそこから100メートル先くらいの歯医者だけど(笑)」
そう、今や駅周辺や町中では“ちょっと歩けば歯科医院に当たる”!
……が、今回本当に考えさせられたのは
いつも空いていて患者数が少ないから悪いとも限らないし
いつも混んでいる歯科医院が必ずしも良いわけでもない、ということだ。
30分以内でどんどん患者を捌き常に待たせない治療をモットーにし時間きっかりで終わらせる方に比重をおいて経営している歯科医もあるだろう。
しかし、予約の数にこだわっていない歯科医院であれば痛みに対してさまざまな疑いをもち時間をかけて診療してくれるかもしれない。
コンビニのように歯科医院が数多く点在していてもそこにいる歯科医の症例数や経験値は患者はしるよしもない。
しかし患者が欲しているのはただ単に技術ではない!!
一番大切なのはきちんと向き合ってくれるか?耳を傾けてくれるか?
そう、なんにしても治療においては先生との意思疎通が一番大事なこと。
専門用語などの一言で済ませるのでなく素人にもわかりやすく説明してくれるか?
自分がどういう状況でどんな治療が必要なのか、治療にはどんな選択肢があるのか?どんなメリットやデメリットがあるのか?などだ。
患者というのは知りたいくせに引っ込み思案である。
そう、弱気でダメダメなのである。
先生が忙しそうで声をかけられない、どういうタイミングでどういう質問をしていのかわからない。
先生のご機嫌を損ねたら……と思うと不安や疑問があってもなかなか聞けない。
そして痛みがあればあるほど聞くべきなのに目の前の痛みにとらわれすぎて「早くなんとかして欲しい」が先立ってしまう。
知識の無い患者側が先生に全てを委ねてしまうことにも問題があるのだ。
委ねる前にまず所見を仰ぐことだ。
治療した後で、それも歯や神経を抜いちゃったあとで
「素人だから聞いても仕方ないと思った」とか「先生の任せとけば大丈夫だと思ってたから……」「自分は知らなかった」では済まされない。
だって……
失われたものは二度と戻ってこない!
歯を守るのは自分。
芸能人じゃなくとも、東幹久さんじゃなくとも”歯は命!”
皆さん、どうかご自身の歯を大切に守ってくださいね。
あ、そうそう日頃からのケア、歯ブラシも大事ですよ~
歯磨き正しくしていますか? 歯周病にならないために
http://www.excite.co.jp/News/laurier/beauty/E1392285792867.html